人工肛門・人工膀胱を造設された方の障害年金|原則3級・2級認定の条件を社労士が徹底解説
目次
大腸がんや膀胱がん、あるいは潰瘍性大腸炎やクローン病の治療として人工肛門(ストーマ)や人工膀胱(尿路ストーマ・新膀胱)を造設することになり、これからの生活や仕事への影響に不安を感じていませんか。
「手術は無事に終わったけれど、これからどうやって生活していけばいいのだろう」
「ストーマを造ったら障害年金がもらえると聞いたけれど、本当に対象になるのだろうか」
そんなお悩みをお持ちの方に向けて、人工肛門・人工膀胱(ストーマ)造設による障害年金の認定基準、受給できる金額の目安、申請のタイミングまで、障害年金を専門に扱う社会保険労務士がわかりやすく解説いたします。
ストーマ造設は、障害年金の認定基準のなかでも判定が比較的明確な障害にあたります。ぜひ最後までお読みください。
1. 人工肛門・人工膀胱を造設したら障害年金はいくらもらえる?
結論:原則として障害年金3級、併設や状況によっては2級認定の可能性も
人工肛門・人工膀胱を造設された方は、原則として障害厚生年金3級に認定されます。これは国の障害認定基準(国民年金・厚生年金保険障害認定基準)で明確に定められており、ストーマを造設したという事実が認定の基礎となります。
さらに、以下のような併設・併存があるケースでは、2級認定の可能性もあります。
| 状態 | 想定される等級 |
|---|---|
| 人工肛門のみ造設 | 3級 |
| 新膀胱(代用膀胱)造設 | 3級 |
| 尿路変更術(回腸導管・尿管皮膚瘻等) | 3級 |
| 人工肛門+新膀胱(または尿路変更)の併設 | 2級 |
| 人工肛門+完全排尿障害(自己導尿が必要な状態) | 2級 |
| 尿路変更術後の異常(漏れ・閉塞等)が継続 | 2級該当の可能性 |
受給できる金額の目安(2026年度/令和8年度)
2026年度(令和8年度)の年金額は、前年度から障害基礎年金が1.9%、障害厚生年金(報酬比例部分)が2.0%引き上げられました。
| 加入していた年金 | 等級 | 年額の目安 |
|---|---|---|
| 障害基礎年金(自営業・専業主婦等) | 2級 | 847,300円 |
| 障害厚生年金(会社員)3級 | 3級 | 最低保障 635,500円〜(報酬月額により増額) |
| 障害厚生年金(会社員)2級 | 2級 | 約120万〜200万円(報酬による/障害基礎年金847,300円+報酬比例の年金) |
| 障害厚生年金2級+配偶者加給 | 2級 | 上記+243,800円 |
| 子の加算(18歳年度末まで) | ー | 1人目・2人目 各243,800円/3人目以降 各81,300円 |
例:50代会社員(標準報酬月額40万円・配偶者あり)で大腸がんにより人工肛門と新膀胱を併設した場合
→ 障害厚生年金2級+配偶者加給で 年間約175万円 が目安です。※標準報酬月額・加入期間により変動
会社員として厚生年金に加入していた方は、報酬比例部分の金額が上乗せされるため、自営業の方より受給額が大きくなる傾向にあります。
認定日の特例:ストーマは造設日が基準
通常、障害年金は「初診日から1年6ヶ月後」が障害認定日となりますが、人工肛門・人工膀胱の場合は 認定日の特例が適用されます。
| ストーマの種類 | 障害認定日 |
|---|---|
| 人工肛門の造設 | 造設日から 6ヶ月を経過した日 |
| 尿路変更術 | 手術日から 6ヶ月を経過した日 |
| 新膀胱の造設 | 造設日 |
つまり、手術から6ヶ月(新膀胱の場合は手術日当日)で請求できるようになります。初診日から1年6ヶ月を待つ必要はありません。
がんの術後で社会復帰を急ぐ方、傷病手当金の受給期間が残り少ない方にとって、この特例は大きな意味を持ちます。
2. ストーマ造設後の障害年金で見落とされがちな「2級認定」のケース
人工肛門・人工膀胱の障害年金は「3級」と思い込まれているケースが非常に多いのですが、実際には2級認定の可能性があるケースは少なくありません。
特に以下のようなケースは、申請時に正確に状況を伝えれば、3級ではなく2級として認定される可能性があります。
✅ 2級認定の可能性がある状態
- 人工肛門と新膀胱(または尿路変更術)を両方造設している
- 人工肛門を造設しており、かつ完全排尿障害がある(自己導尿が必要、留置カテーテルを使用している など)
- 尿路変更後にストーマからの尿の漏れが継続的にあり、装具の頻回交換が必要
- ストーマ周囲皮膚障害が重度で日常生活に著しい支障がある
このようなケースでは、「障害厚生年金2級+配偶者加給」で年額100万円以上の差が生まれることもあります。
3級と2級では年金額が大きく異なるため、ご自身の状態が2級に該当する可能性があるかどうか、申請前に必ず確認しておくことをおすすめします。
3. 人工肛門・人工膀胱の方が障害年金申請を早く検討するべき3つの理由
理由①:障害年金には5年の時効がある
障害年金は、認定日に遡って最大5年分まで一括で受け取ることができます(遡及請求)。
逆に言えば、5年を超えた分は時効で消滅してしまいます。
「ストーマを造設して数年経つけれど、障害年金のことを知らなかった」という方は、毎年数十万円〜100万円以上を失っている計算になります。
例:5年前に人工肛門と新膀胱を併設、障害厚生年金2級該当のケース
→ 遡及請求で 約700万円〜の一括受給となる可能性があります。
理由②:診断書の記載は時間が経つほど取りづらくなる
障害認定日(造設から6ヶ月後)時点の状態を証明する診断書が必要ですが、時間が経つほど当時のカルテが廃棄されたり、執刀医・主治医が異動・退職したりするリスクが高まります。
特に、5年・10年と経過したケースでは、当時の状態を正確に証明することが難しくなり、遡及請求が認められないことがあります。
理由③:傷病手当金の受給期間が終わってしまう
がんや潰瘍性大腸炎などでストーマ造設に至った場合、多くの方は傷病手当金(健康保険)を受給されています。傷病手当金の受給期間は最大1年6ヶ月。
この期間が終了するタイミングで障害年金の請求準備が間に合っていないと、収入が途絶える「空白期間」が生まれてしまいます。
ストーマ造設から6ヶ月が経過したら、傷病手当金の残期間にかかわらず、早めに障害年金の請求準備を始めることが極めて重要です。
💡あわせて読みたい:障害年金の遡及請求(さかのぼり請求)とは?
4. 働きながらでもストーマ造設後の障害年金は受け取れる?
結論:はい、就労していても受給できます
ストーマ造設による障害年金は、就労の有無にかかわらず認定されます。
人工肛門・人工膀胱は、装具の交換・管理、漏れの不安、ストーマ周囲のスキントラブルなど、日常生活上の負担が継続的に存在することが障害認定の理由とされています。「働けるかどうか」とは別の基準で判定されるため、復職後・在職中の方でも受給できるのが大きな特徴です。
ただし、診断書や病歴・就労状況等申立書には、現在の業務内容・就労にあたっての配慮事項・装具交換の頻度・ストーマトラブルの有無などを具体的に記載することが望ましいといえます。
こんな方は申請をご検討ください
- ストーマ装具の交換に1日30分以上かかっている
- 装具からの漏れにより衣類交換・入浴対応が必要なことがある
- ストーマ周囲皮膚炎で皮膚科に通院している
- トイレ事情で外出時間・出張・会議参加に制約がある
- 食事内容に強い制限がある(食物繊維・ガス発生食材等)
5. 人工肛門・人工膀胱の障害年金に関するよくあるご質問
Q1. 一時的なストーマ(数ヶ月後に閉鎖予定)でも障害年金は受給できますか?
A. 原則として、一時的なストーマは障害認定の対象外となります。閉鎖手術の予定があるかどうかは医師の判断によりますが、永久造設である旨が診断書に記載されていることが必要です。閉鎖予定がある場合でも、長期間(おおむね1年以上)閉鎖の見込みがないと判断されれば対象となるケースもあります。
Q2. 大腸がんや膀胱がんの治療中ですが、がん自体での障害年金とストーマでの障害年金、どちらで申請すべきですか?
A. ご状態によって有利な申請方法が異なります。化学療法継続中・全身倦怠感が強いなどがん自体での認定が見込めるケースもあれば、ストーマでの認定が確実なケースもあります。両方を主張して併合等級を狙えるケースもありますので、専門家にご相談ください。
Q3. 初診日はいつになりますか?
A. ストーマ造設の原因となった疾患で初めて医師の診療を受けた日が初診日です。
- 大腸がん → 大腸がんを疑って初めて受診した日(健診後の精密検査含む)
- 膀胱がん → 血尿等で泌尿器科を初めて受診した日
- 潰瘍性大腸炎・クローン病 → 当該疾患で初めて受診した日
健診の便潜血陽性で受診した場合は、その日が初診日となることが多くあります。
Q4. 国民年金(自営業)でもストーマ造設で障害年金は受給できますか?
A. 3級は障害厚生年金にしか存在しないため、初診日に国民年金加入だった方が「人工肛門のみ造設」の場合、原則として障害年金の対象外となります。
ただし、人工肛門+新膀胱併設、人工肛門+完全排尿障害などで2級該当の状態であれば、障害基礎年金2級(年額847,300円)として受給できる可能性があります。
Q5. ストーマ造設から3年経っていますが、今から申請できますか?
A. はい、可能です。造設日から6ヶ月経過後の障害認定日に遡って5年分まで請求できます。早めにご相談いただければ、遡及請求も含めた最適な申請方法をご提案します。
6. ストーマ造設に伴う障害年金のご相談は専門の社労士へ
人工肛門・人工膀胱(ストーマ)の障害年金は、認定基準が比較的明確で受給可能性が高い一方、3級か2級かの判断・併設疾患の主張・初診日の特定など、専門的な判断が必要な場面が多くあります。
特に「3級だと思っていたら2級該当だった」「2級該当なら年額が100万円以上違った」というケースも珍しくありません。
当事務所では、人工肛門・人工膀胱をはじめとする様々な病気やケガの障害年金申請を専門的にサポートしています。受給できる金額の試算や、初診日の確認、2級該当の可能性の判断など、分からないことがあれば何でもご相談ください。ご本人やご家族の負担を少しでも軽減できるよう、親身になってお手伝いいたします。まずは無料相談やLINEによる簡単相談から、お気軽にお問い合わせください。

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